なつかしい歌
前回のダイアリーにも書きましたが、現在わたしは入院しています。
声を出すことを禁じられているので、人と会話をすることができません。看護士さんやお医者さんに短い返事をする以外は、始終黙っています。
わたしを取り巻く周囲の世界との、直接的な交流がほとんどない毎日の中では、心に揺れが生じません。いらいらするようなことが一切ないので、怒ることはなく、またうれしいことも特にないので、笑わない。何かを考えるわけでもなく、ただぼんやりして、時を噛みしめるように過ごしているのです。
青い水の中に沈んで、ゆらゆら揺れているような。少しさみしいんだけど、静かで心地よい気分です。
この静けさがいとおしくて、騒々しいテレビをつける気になれないことが多いので、食事の時以外、たいていは本を読んでいます。
今日は、アーチスト門秀彦さんの『世界がこんなに騒がしい日には』という本を読みました。わたしは今まで門さんという方を知らなくて、作品も見たことはないのですが、入院前に書店でこの本を見つけ、最初の1ページにどきんとして、購入したのでした。
その、第一印象の“どきん”は当たりだったようで、この本に描かれていた門さんの思いというものは、わたしにはなんとも衝撃的な内容でした。読んでいると感動して、はらはらと涙が流れることもありました。作品を近くで見たい、と強く思いました。
本1冊を読み終えると、何かを作り出す人の“熱”のようなものに打たれて、わたしはしばらくぼーっとしてしまいました。
作る、と言えば、わたしも歌を作るのです。
何のために作るのか。
何のために歌うのか。
自分の中にこたえを持っていなければ作れないし歌えない、と、強く思う時があります。
が、その一方で、こたえを探そうとして、なにか大いなる渇きのようなものがわたしをつき動かすから、歌を作り歌えるんだ、と、思う時もあるのです。
でも。
本から目を上げて空を見ると、ここはあまりに静かで、心がしんと冷たくなるのでした。わからない。
不意に院内放送のスピーカーから、なつかしいメロディがオルゴールの音色で流れました。なんだったかな、この歌。曲名も思い出せないけれど、なつかしい歌。
泣き出したいような、飛び上がりたいような、せつないような、笑い出したいような…くちゃくちゃな感情が、音楽に引っぱり出されて、わたしの中をくるくるまわります。
どこから届いたかもわからない歌。でも、わたしの心に確かに生きる誰かの歌。
こんなふうになりたい。
漠然と、空に誓いました。
花は、わたしの決意に素知らぬ顔。今日もやはり静かないちにち。
追伸/わたしにとって初めてのシングル「帰ろう。」が、入院中の6月2日に発売されました。お買い上げ下さったみなさん、ほんとうにありがとうございます。まだ手に取ったことのないみなさん、一人でもたくさんの方に聴いていただけるとうれしいです。ぜひぜひ! よろしくお願いします。


やなせななさん
初めまして、門です。
[世界が~]読んでくれて嬉しいです。
どうもありがとう。
僕には音楽の才能はないのでななさんがうらやましい。
すばらしい歌を歌い続けてくださいね。
僕もがんばります。
コメント by kado — 2005/3/18 金曜日 @ 20:16:17