New Album 「遠い約束」

『愛のうた』

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このサイトのニュースにも情報を掲載しましたが、5月25日(水)に、わたしにとって初めてのフルアルバム「あいのうた」が発売されることになりました。これまで作り溜め、録り溜めて来た10曲は、このサイトでも試聴ができる、ライブではすっかりおなじみの歌ばかり。CDでしか聴くことのできないいろんなアレンジで、たくさんのミュージシャンといっしょに演奏しています(編曲はおなじみピアニストの黒木千波留さんと、ベーシストの増根哲也さん)。
発売日には、東京都内でのライブも予定していますので、どうぞお楽しみに。
その後も“あいのうた”を携えて、いろんな場所に出没予定です。うふふ。

そして、もうひとつ。5月3日、ゴールデンウイーク真っただ中に、スペシャルなCDが発売されます。「Saudade de Cafe Milton ~カフェミルトンへのサウダージ」。このCDは、宮城県白石市にあるカフェミルトンの10周年を記念して作られたアルバムで、全部で15組のアーチストの“愛”がたくさん詰まった楽曲が収録されています。
去年、いろんなご縁が重なり合って、運良くミルトンさんという素晴らしい音楽空間と出会うことができたわたしも、このアルバムに参加させていただきました。
カフェミルトンは不思議なお店です。マスターもママもスタッフも、そこに集うお客さんも、みんなとっても音楽が好きで、とにかく熱い!のですが、感じられるのはただの熱気というより、人の心のあったかいところの、においや手触りのようなもの。単に音楽好きが集っている、という感じではなく、真摯に暮らすどんな人のからだやこころの中にも流れる、名づけられないような「うた」に耳を傾け、それを笑顔と涙で分かち合えるような、そんなお店なんだと思います。わたしも、そのなつかしさに似たぬくもりの中に、すっぽりと包まれてしまいました。
ひとりでもたくさんの方に、“ミルトン”を届けたい。心からそう思います。

『たけのこホリデー』

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このところ、空は雲ひとつない晴れ間が広がっていて、吹く風もさわやか。歩くだけで幸せな気分になれるようなお天気が続いています。
今日の写真は、道端のたんぽぽ。見た感じは可憐でかわいらしいのに、根は地中深くまで長く長く伸びていて、強い。好きな花です。

可憐なのに強い、といえば、今“がんばるぞ”というようなテーマの歌を作っています。と言っても、いわゆる応援歌という感じではなく、弱い者が精一杯がんばっている、というようなイメージの歌です。主人公はたんぽぽではありませんが、かなしい出来事が後を絶たない毎日の中、野の花のようにたくましく暮らす姿を描きたくなり、自分を奮い立たせるような気持ちになって作っています。
とはいえ、いざ作業を始めると、あれこれしてはみたけれど、結局何ひとつ進まないまま、一日が終わってしまう、なんてこともしばしばです。本当に、しばしば。ふにょ。
でも今は作りたいもののイメージを形にしたい、という気持ちが強くなっているので、たんぽぽパワーでがんばらなくては。

たんぽぽパワー、といえば、先日「たけのこホリデー」と勝手に名前をつけた、たけのこを使ったお料理を作りました。ははは。
我が家は竹やぶにかこまれた田舎にあるので、たけのこは毎年楽しみにしている、身近な山の幸。たけのこだけでなく、今はわらびなどの春の山菜が旬ですね。
たけのこホリデーは、茹でたたけのこにカレー粉をまぶし、バターで炒めて、最後にお醤油をお鍋に沿ってじゅわーっとかけるのです。なかなか好評でした。
命名に意味はなし。ただ、何だか食卓にわくわく感が増すような気がしたのです。

『春、ららら。』

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まだ街のところどころに雪が残っている函館から家に帰ると、辺りはすっかり春になっていました。あたたかい風に吹かれていると、何だかわけもなく、うれしくなりますね。ららら。
晴れた日に、駅までの道をのんびり散歩気分で歩いていると、ここかしこに花が咲いているのを目にしました。
さくら、菜の花、れんげ、チューリップ、すみれ、ぺんぺん草、たんぽぽ、そして花オンチのわたしには名前のわからない、色とりどりのかわいらしい花たち。今回のダイアリーには、それらの花々を代表して、近所の小学校の校庭に咲いていたさくらを。

金網越しの校庭では、子どもたちが夢中で遊んでいました。何て明るい笑い声なんだろう。元気いっぱい走り回れる、あたたかい春を待っていたのかな。
「ゲーム脳」なんて何だかかなしい響きの言葉を耳にするようになった昨今ですが、きっと大丈夫。と、何がどう大丈夫なんだかイマイチわからないながらも、わたしはうんうん頷いてしまった。

そんな子どもたちの様子をぼんやり見ていたら、金網の向こうになつかしい顔を見つけました。わたしがその小学校に通っていた頃に、用務員をしていたおばさん。昔とまるで変わらないエプロン姿で、花壇のそばでお仕事されてました。
「おばさーん!こんにちは!」。お花と子どもに元気をもらって、思わず声をかけてしまったわたし。「…こん…にち…は?」おばさんは怪訝そうな顔で近付いて来ました。が、すぐに卒業生だとわかったみたいでにっこり。しばし立ち話をして、わたしは足取り軽く小学校を後にしました。

おばさん、いつまでも若いなあ。全然変わらないや。
おばさんはすぐ近所に住んでいて、娘さんも同じ小学校に通っていました。わたしのひとつ下だったような。
…待てよ。
もにょもにょっと逆算すると、20年くらい前にわたしが小学生だったとき、おばさんはおそらく30才くらい。ということは!今のわたしとほぼ同い年!そりゃ今も若いはずだ。
「おばさん」だって。ははは。

昔と変わらないなだらかな山を遠くに見ながら、わたしはひとり、声を上げて笑ってしまいました。

『函館に行って来ました。』

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前回のダイアリーで“風邪はやっと治った”と書いた、まさにその翌日、わたしはまたしても風邪をひいてしまいました。うおーん(泣)。そして再び、花粉症と風邪でダウン。今度の風邪はひどくて、1週間以上経った今も、咳コンコンが続いています。こんなひ弱なわたしが言うのも何ですけど、皆さまもどうぞ体にはお気をつけて…。

でも、ダウンする暇もなく、先週は慌ただしい毎日を送っていました。友人の結婚式に出席し、知人のバンドのライブを見に行き、そしてわたしの親友が初めて手掛けたお笑いライブを見に行き…。って自分は全く何もしていないのですが(笑)、何だかバタバタとしていましたね。
特に親友のお笑いライブ。我が事のように緊張してしまいました。彼女はお笑い作家のタマゴで、わたしとは活動する世界は違うけれど、お互いを支えや刺激にしてがんばっている、大切な同志のような存在なのです。わたしはこのサイトのプロフィールにも「お笑い好き」と載せていますが、そんな「笑い」の本当の素晴らしさを教えてくれたのも、他ならぬ彼女だったし。
彼女の手掛けたコントが演じられたそのライブは、若い力が溢れる、なかなか素敵なものでした。彼女のこれまでの人生が反映された人物描写と、その人柄や主張が確かに感じられるコントを見て、笑うはずが涙ぐんでしまった。
前回のダイアリーにも書きましたが、どんな人生も山あり谷ありで、なかなか思うようには行かないものですよね。でも、何だかわからないけど、どんなに落ち込んでも迷っても、うつむいていた顔を上げて、またがんばってしまう。そんな日々を、わたしも彼女も、そしてわたしの知らないたくさんの人もまた、懸命に送っているんだろうなと、改めてしみじみ考えさせられました。

そして、そんな感動を胸に、週末からは北海道は函館に行って来ました。先週末に出演させていただいた、FMいるかさんを始め、お世話になった函館の方々、本当にありがとうございました。わたし、海の幸がとってもおいしくて、出会う人が皆あったかい、そんな函館の町が、すっかり好きになりました。
近々このサイトのニュースにもアップしますが、実は現在、北海道での初ライブを計画中です。また、その他各地でもライブをする予定なので、どうぞお楽しみに!

『がんばれがんばれ。』

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前回ダイアリーで風邪と花粉症のことを書きましたが、相変わらずつらい季節が続いていますね。風邪はなんとか治ったわたしも、くしゃみ鼻水にはずっと悩まされています。
体がツライと、つられて心も曇りがち。大した悩みがあるわけでもないのに、このところどうも落ち込みぎみで。アレルギーに効くという「甜茶」をすすりながら、日々ため息ついてます。ユウウツもまた、心の風邪みたいなものなんでしょうかねえ。
こうしてへこんでいるときに、ふとしたことから、昔の知り合いがストリートライブをしている様子をネット上で知りました。彼らは、関西ではかなり人気のあるアーチストなのですが、ここしばらくは、雨にも負けず、風にも負けず、警察にも負けず…音出しOKの場所を探して放浪し、日々唄い続けているとのこと。
苦情や注意・勧告にさらされるため、ボロボロになる日もあるようですが、うまく行った日は、何十人(100人近く)もの人垣ができたらしく、ひとりでもたくさんの人に自分たちの音楽を届けるためにがんばるぞ、というようなルポが、感動いっぱいに書かれていました。
妙に心を打たれてしまった。
彼らは、もう何年も会ってない知り合いなんです。相変わらず、自分たちを取り巻く現実はそう甘くはない。でも、昔と変わらず、いや、おそらくあの日以上に命を削って唄っている。唄い続けている。なぜ?そこまでして?怒鳴られても笑われても、唄う。きっと、どうしても伝えたいものがあり、届けたい人がいるんだろうな。
どんな歌声だったのかは、聴いていないのでわかりません。でも、そこに書かれていた「感動」からは、確かに本物のにおいがして、読みながらわたしは、少しだけ泣きました。

大好きなシンガーソングライターのSionさんが、「砂の城」という曲の中で歌ってました。
この最悪だって、越えるためにある。って。
がんばれ、がんばれ。

『ダブルパンチ』

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3月10日(木)は、約半年ぶり、今年初めての京都ライブでした。お越しくださったみなさま、どうもありがとうございました。今回はギターも入った新しい編成での初ライブ、そして久々の地元ということもあって、力が入り過ぎたわたしは、当日かなり緊張してしまいました。でも、ライブ終了後には、アンケートやメール、このコーナーのコメント欄などにも、たくさんあたたかいメッセージをいただき、ほっと一息。その言葉のひとつひとつをさらに噛みしめていると、日々ゆっくりと、体や心の奥の方から新しい元気が湧いて来るようです。ありがとう。

ところが、数日前に風邪をひいてしまいました。季節の変わり目で、あたたかくなったかと思えば、急に寒くなったり…といった不安定な気候が続いているため、巷でも風邪はかなり流行っている様子。わたしもとうとうやられてしまいました。それに加えて花粉症!目鼻喉をこのダブルパンチで攻撃され、今はかなりダウン気味、抵抗できないまま、とりあえず、とにかくぼんやり過ごしています。みなさんも体にはお気をつけてくださいね。

本日の写真は庭のしだれ梅。今が盛りです。ついこのあいだ、この花の上にうっすらと雪が積もりました。すぐに溶けて、今日は晴れ。春はもうすぐそこまで来ていて、冬がさよならを告げるのをじっと待っているのかもしれません。

『レコーディング』

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数日前から、レコーディングのためにスタジオに入っていました。初夏に新しいCDの発売を予定していて、現在その準備を進めているのです。
やなせななにとって、初めてのフルアルバムになります。詳細は決まり次第、順を追ってこのサイトのニュースにもどんどんアップして行きたいと思っていますので、どうぞお楽しみに!応援よろしくお願いいたします。

今回のレコーディングでは、ライブではすっかりおなじみになっている「あいのうた」「猫と夕月」「蜜柑」の3曲を録音しました。全く新しいアレンジになったものもあって、ワタクシも思わずにっこりしてしまうような、なつかしい音や、優しい音がいっぱい。CDでなければ聴くことができない、スペシャルな編成になっていますよ。うふふ。
レコーディングは、ライブでの演奏とは違って、緻密な作業が長い時間続きます。時を越えて、距離を越えて、いつか誰かの心に確かに届けられるように。たくさんの人の技術と、仕事に向かう勤勉な姿勢、そして音楽を創り出す喜びが重なり合って、ゆっくりと1つの曲としての形を成してゆくのです。それは、わたしひとりでは決して感じることのできない、大きな喜びでした。
このしあわせパワーを支えに、あしたからもがんばるぞ。

来週は半年振り、今年初の関西ライブです!ピアノとギターと歌、というこれまでになかった編成で、わたしの大好きな街・京都に参りますよ!お近くの方は、ぜひぜひお越しくださいませ。みなさんにお会いできるのを、心から楽しみにお待ちしています!ではでは。

『紅夢』

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寒くなったりあたたかくなったり…何とも不安定なお天気が続きますね。きのうの関西は小春日和で、ぽかぽか陽気の中、庭でネコたちがはしゃいでいました。
少しずつ、春が近づいて来ているのですね。写真は、今わが家で満開のお花。種類わかりません。ワタクシ、実はお花オンチなのです。ほほ…(汗)。

数日前、何気なく見ていた深夜のテレビで、偶然「紅夢」という映画を見ました。1991年の中国・香港の合作で、監督はチャン・イーモウ、主演はコン・リー。
物語は1920年代の中国が舞台。ヒロインのスンリェンは19歳のインテリ学生でしたが、父親の急死で苦しくなった家計を助けるため、学業を断念して、大金持ちの第四夫人となります。4人の妻たちは、お屋敷内にそれぞれの家(院)を与えられ、夫であるその家の当主が、床を共にするために訪れる院の前にだけ、夜になると赤い提灯が灯されるしきたりになっています。外の世界から隔絶された中で、提灯が象徴する栄誉や権力の獲得に、一喜一憂する女たち。ヒロインも次第に、嫉妬と策略が渦巻くその醜い争いに巻き込まれ、結局はとてつもなく悲劇的な結末を迎えてしまうのです。

この作品は、ベネチア映画祭で銀獅子賞に選ばれているほか、様々な映画賞を受賞している名作の誉れ高い映画だったようで、わたしもエンドロールの最後まで、2時間以上テレビの前から動けませんでした。いやあ~素晴らしかった!
ストーリーそのものも、とても面白いのですが、何よりもその映像の美しさといったら格別です。屋敷内の映像がほとんどなのに、確かに季節の移り変わりを感じさせる空気感。中国の古い建物やインテリアの、少し翳のあるような独特の幽玄美。色のない夜の闇の、グレーの瓦屋根の間に浮かぶ、紅い提灯の鮮烈な印象…。もうたまりません。
久しぶりに映画を見て大興奮しました。このダイアリーを読んで興味を持たれた方がいらっしゃったら、ぜひぜひ。オススメですよ!

『恋』

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少し前になりますが、2月14日はバレンタインデーでしたね。日本では、女性が男性にチョコレートを渡して、恋心やら愛やら感謝やらを伝える日、という通例になっています。

わたしは昔から、このバレンタインという行事が結構苦手でした。あからさまなハート型のチョコレートに、何かしらじらしさみたいなものを感じて、気恥ずかしくて。要はあまのじゃくなんですね(笑)。
でも、最近はそんな気持ちも少しずつ薄らいで来て、今年は例年になく、チョコやカードを贈りました。日ごろなかなか“ありがとう”を伝えられない人に、この機会を借りようと思いまして。おほほ。喜んでくれるかな、なんて、相手のニコニコ顔を想像するのは、なかなか楽しいものでした。

そういえば学生時代、バレンタインの日は、朝から男の子も女の子もそわそわしたものでしたね。わたしの通っていた学校では、数日前から先生が“チョコ持参禁止令”を出したりしてね。理由は「不公平な結果を防ぐため」だったような…。今となっては笑えます。
それでも、チョコをこっそりと鞄に忍ばせて、学校帰りにお目当ての男の子を待ち伏せする女の子たち。震える手でチョコを渡し、やっとの思いで告白する。いやあ、なんて甘酸っぱい想い出なんでしょ。

そんなことを思い出したから、とかいうわけではないのですが、今、銀色夏生さんの詩集を読んでいます。
わたし、中学生くらいの頃、夏生さんの大ファンで。読んだことがある方はわかると思うのですが、恋に恋する年頃にはたまらない詩なんですよねえ。
ひたすらせつなくて、甘くて、苦い。その当時は、読むだけで胸がきゅーん、でしたよ。ははは。

そして今、わたしはまたその甘くて苦いことばたちを、ゆっくりたどっているのです。
もう、恋に恋することもなくなり、シンデレラは王子様と結ばれた後、お城で“生活”をしなければならなかった、という現実を知る年齢になっているのにね。せつないことばには、やっぱりため息をついてしまう。

小さな喜びと悲しみを重ねる、平凡だけどしあわせな毎日。満ち足りた“愛”に支えられて暮らす日々の中で、ふと感じる一抹のさみしさ。この、足りない何かを探すような気持ち、誰しも一度は経験しているのでは。
そういえば、ひとりじゃさみしいのにほっといてほしくて、ひとりになるとあなたに会いたくなる…みたいな歌があったなあ。
恋”はきっと、そんなこころの中の、解けない問いの矛盾の隙間に、静かに存在しているのですね。…たぶん。
いずれにしても、恋は短きうたかたの夢。
ふう。

『和歌と能楽』

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最近、定型詩というものに突然興味がわいて来たので、短歌の入門書の中の古典の和歌を、今ぼつぼつと読んでいます。
その中に、わたしにとってなつかしい響きのある歌を見つけました。
「うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき」
これは『古今和歌集』に収められている小野小町の歌で、能楽「清経(きよつね)」という物語の中にも引用されています。
うたた寝をしていたときに恋しい人の夢を見てからというもの、はかない夢などというものを頼りにするようになってしまいました、という、せつない恋の歌。

わたしは、このサイトのプロフィールにも載せていますが、14才から21才までの7年間、能楽の稽古に通っていました。
日本の伝統的な舞台芸術を新鮮でおもしろいと感じたわたしは、奈良に住んでいた能楽師・金春晃實先生の下に入門し、学生時代は厳しい部活動をやっているような感覚で、日々熱心に稽古に励んでいたのです。

お能は、セリフのある舞台劇で、そのセリフはほとんどが歌のようになっています。いわば和製オペラのような。その歌は「謡(うたい、または謡曲ともいう)」と呼ばれ、笛や鼓に合わせて、登場人物はもちろん、舞台の端に座った黒紋付を着た数人のコーラス隊(地謡)も、そのセリフやナレーション部分を歌うのです。能楽の稽古では、その物語のの台本(謡本)をはさんで、師匠と向かい合わせに座り、口移しで謡を教わります。
わたしが15年前に一番最初に稽古をつけてもらった曲、それが「清経」でした。

このお話は、平家の武将だった平清経が主人公です。戦に負けたことを苦に自殺してしまった清経が、幽霊になって奥さんに会いに行き、敗戦の恐ろしさや悲しみを語って聞かせて、最後は別れを告げて成仏してゆく、というストーリー。
この曲は、平家物語をもとに作られた戦いのお話ですが、清経と奥さんの言葉のやりとりは、なかなかロマンチックで、どこか恋物語のような趣もあるのです。
小野小町の和歌は、清経の幽霊が奥さんの枕元に登場するときに、低い声で歌います。
清経の死を知って、泣き疲れて眠る奥さんに、そっと呼びかけるかのように歌われるその一首。
わたしの記憶の中には、数年前に亡くなった師匠の金春先生がその一節を謡う声が、今も確かに残っていて、和歌を目にした時は、とてもなつかしいのに、せつなくてたまらないような気持ちになりました。

今年のNHKの大河ドラマは源義経を主人公にしたお話だということもあって、町の本屋さんではその頃の歴史を扱った書物がたくさん並んでいます。
能楽には、平家物語を題材にした曲がたくさんあるということもあって、わたしにはどこかなじみのある歴史のお話を耳にする機会が少し増えました。
久しぶりに、ゆっくりとお能の舞台を見に行きたいな、と、ぼんやり考えたりしています。

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